三上延『ビブリア古書堂の事件手帖3』
2012-07-05


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全校生徒にブラッドベリを伝えるプロジェクトは無事終了。ただし、グランドコンディション不良のため、外での講話ではなく、放送での講話となった。放送だと原稿を見ながら話せる利点はあるが、生徒の顔が見えないので、反応がよくわからないという欠点もある。せっかく原稿を暗記して臨んだのにちょっとがっかり。ちゃんと伝わったかどうかはわからないが、何人かの生徒に「よかったよ」とか「話を聞いて本を読もうと思った」とか言われたのでよしとしよう。この日は図書館の来場者も普段の倍に増え、貸し出し数も一挙に増加。ブラッドベリは『火星年代記』『華氏451度』2冊とも貸し出し中。あと、SF関係で人気があるのは『たったひとつの冴えたやり方』『アンドロ羊』『夏への扉』といったところ。おお、『ハイペリオン』もいつの間にか借りられている。よしよし。図書館SF増殖計画は順調に進んでいる。

 さて、今回は『ビブリア古書堂』について。古書店の女性美人店主が毎回古書に絡んだ事件を解決していくという人気シリーズである。一冊目で店主がアンナ・カヴァン『ジュリアとバズーカ』を読んでいる場面でぶっ飛び、以後かかさず読んでいる。夏目漱石、太宰治、司馬遼太郎といったメジャーな作家をきちんと押さえつつ、『生ける屍』『時計じかけのオレンジ』といったマイナーな海外作品まで取り上げているのが本書最大の特色である。古書に関する知識や本の内容が事件と密接に絡み合っていくのも面白いところ。事件そのものは、ありきたりの人情話で、もしも古書が関わっていなかったら凡作の域を出るものではない(それでもたとえば『謎解きはディナーの後で』などという小説以前作品に比べれば数十倍面白いが)。3冊目ではついにロバート・F・ヤング他『たんぽぽ娘』が登場。2冊目でル・グイン『ふたり物語』を店主が読んでいたのはこの伏線だったのか!(どちらもコバルト文庫) それにしても婚約者に贈る本に『たんぽぽ娘』とは……。いや、ロマンチックでいいとは思いますけどね。贈る本としてはどうなんだろう。ちょっと安っぽ過ぎやしないか。相手も本好きならいいのか。あと、作中では「たんぽぽ娘」にしか触れていないが、一応本書はアンソロジーなので、他の作品への言及があってもよかったのでは。「ゼナ・ヘンダースンの『なんでも箱』もいいお話ですけどね」とか栞子さんなら言いそうなものだが。というか、言ってほしかった(願望)。もうひとつ、『たんぽぽ娘』に古書価8,000円は高過ぎでは。せいぜい2,000円といったところじゃないかなあ。などといろいろなレベルで楽しめるのが本書のいいところである。
 店主と母親の関係はどうなるのか。店主とアルバイトの恋の行方も気になる。年末には出るという4冊目を楽しみに待ちたい。

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