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物語の後半は、ようやく舞台がミネルヴァに移り、三作目同様の悪役ジェヴレン人との戦いがテンポよく描かれていく。マルチヴァースと言いながらも、主人公らの世界は固定されているので、結局は二つの世界の話になってしまい、悪が滅びるカタルシスは味わえるものの、世界の広がりという点ではSF的な発展があまり見られずに物語が終幕を迎えるのはいささか残念である。前半のマルチヴァース理論の面白さが、後半のシンプルな物語であまり生かされていないという批判は当然生じるであろう。しかし、ホーガンが本シリーズで描き続けたのは、欠陥を備えたままの人間らしさへの讃歌であった。その意味では、本書は、実にホーガンらしい作品であり、完結編にふさわしいとも言えるだろう。
2010年にホーガンが亡くなってからも既に14年が過ぎた。これ以上の続編は望むべくもない。あとは、シリーズを繰り返し読んで、彼が描いた未来と彼亡き後の現在について考えることがせめてもの供養である。ホーガンの遺産は読者が継がなければならないのだ。